アンチ-ロマンチシズムと文学との幸福な共存を謀ります。当面、「炭鉱のカナリア」になる決意をしました。第二次安倍政権の発足以来、国民は墨を塗られるだろうと予測していましたが、嫌な予感が現実になりつつあります。日本人の心性や「日本国憲法」の問題などを取り上げながら、自分の明日は自分で決めることの大切さを、訴えていきたいと思います。
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なかなかに人とあらずは酒壺になりにてしかも酒に染みなむ
                     大伴旅人(『万葉集』巻三・343)

酒を愛したとされる大伴旅人の、‘讃酒歌’13首のうちの6番目の歌。

私はいわゆる下戸で、アセトアルデヒド分解酵素をあまり持っていない様子。
350mlの缶ビールを飲むのに1時間かかるくらいだから、酒壺になりたいとは間違っても思わない。
仕方なく、気の抜けたビールの甘みや苦みを、ウイスキーでも嘗める様に味わっていると、たいていは、変な目で見られる。(ーー;)

上の歌は、三国時代・呉の鄭泉(ていせん)の故事によって詠んだものだ。
呉の鄭泉は死に臨み、死後は窯のそばに埋めるよう、子に遺言した。
数百年の後、土と化した自分が焼き物の材にされ、酒瓶になれたら願いが叶う、というのである。

死ニ臨ミシ日、ソノ子ニ勅シテ曰ク、我死ナバ窯ノ側ニ埋ムベシ。数百年ノ後、化シテ土ト成リ、覬取(きしゅ)シテ酒瓶トナラバ、心願ヲ獲タリト。(『琱玉集』)

熊の彫刻

この‘讃酒歌’をはじめ、今日伝わっている大伴旅人の歌の多くは、旅人が大宰帥(だざいのそつ)として筑紫に赴任して以降のものである。
聖武天皇の治世、神亀4年か5年(728年)に太宰府長官となった旅人は、天平2年(730年)に奈良に帰るまで、山上憶良らと共に‘筑紫詞壇’を形成した。
帰京後、旅人は731年に没しているから、最晩年の短い期間の詩作といえる。
64歳にして興った老年の文学である。

旅人も憶良もそうだが、新しい漢学の素養があって、人生的感慨をそのまま歌に詠みこむ傾向があった。この讃酒歌も、酒の讃め歌がいつか老荘的な人生観の吐露になってしまうのである。彼(註-旅人)が老荘思想や仏教思想をどの程度に理解していたか、そのことはさしあたって大した問題ではない。彼が老荘の無為自然の教えから、彼なりに一つの享楽主義思想を引出していたことを見れば、足りる。
(山本健吉『詩の自覚の歴史』,第七章「筑紫詞壇の成立」)

老荘的享楽主義を一つの枠組みとして、大伴旅人が‘自家製の哲学’を歌うようになるには、太宰府在任の日々が必要だった。
都から遠く離れ、心の内の憂悶と日夜向かい合うことで、旅人の歌口は解かれた。
古い豪族であった大伴氏の衰運。
それと対照的に、聖武天皇・光明皇后を戴いた外戚藤原氏一門の栄達の噂。
そしてなにより、太宰府着任早々、妻の大伴郎女(おおとものいらつめ)を亡くしたこと。

験(しるし)なきものを念(も)はずは一坏(ひとつき)の濁れる酒を飲むべくあるらし
                     大伴旅人(『万葉集』巻三・338)

‘讃酒歌’の1番目の歌である。
効もない物思いに沈む自分に、言い聞かせている。

テントウ虫

次は、讃酒歌11番目の歌。

今代(このよ)にし楽しくあらば来む生(よ)には蟲にも鳥にも吾はなりなむ
                      大伴旅人(『万葉集』巻三・348)

仏教と老荘思想とは、来世を説くと説かぬとにおいて、全く相容れないのだという。


「来世は畜生道に堕ちるぞ!」といった脅かしに屈して、自分の陣地を明け渡してしまう事なんか、早く無くなればいい。
他人の頭の中を占拠したがる新興宗教の徒に対し、NO!と言えない人が逮捕されたのは、つい最近のことだ。

一方で、奈良時代にすでに、こんな風に言い放つ人間がいたのだった。
山本健吉という優れたナビを得て、『万葉集』が退屈でなくなった今日この頃。

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[2012/07/12 06:00] | 古典と現代文学
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山上憶良
やけなかまじし3
御記事に対しまして、3件ほどコメント申し上げます

①山上憶良の「貧窮門答歌」は実は当かっちんめえばる生誕(悲しくも楽しい)の源流です。


②酒への愛は・・溺愛といいます
僕の場合、最初のビールは30秒で愛し終えます。


③土と化した自分が焼き物の材にされ酒瓶(あるいはシーサー)なる・・・夢のような没後未来です。

ほ、北海道も暑いですか~?

Re: 山上憶良
小谷予志銘
やけなかまじしさんへ

北海道は、気持ちのいい暑さですよ。西日本と比べると。
道産子じゃない私など、スイカを見るのも寒いくらいで・・・。

お酒を呑める人がうらやましいですな。
サッポロファクトリーの「ビヤケラー」では、未ろ過のピルスナーが飲めるんですが。
アルコールが弱くても、美酒だと分かります。
北海道においでの際は、ぜひご賞味ください。


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この記事へのコメント:
山上憶良
御記事に対しまして、3件ほどコメント申し上げます

①山上憶良の「貧窮門答歌」は実は当かっちんめえばる生誕(悲しくも楽しい)の源流です。


②酒への愛は・・溺愛といいます
僕の場合、最初のビールは30秒で愛し終えます。


③土と化した自分が焼き物の材にされ酒瓶(あるいはシーサー)なる・・・夢のような没後未来です。

ほ、北海道も暑いですか~?
2012/07/16(Mon) 16:22 | URL  | やけなかまじし3 #-[ 編集]
Re: 山上憶良
やけなかまじしさんへ

北海道は、気持ちのいい暑さですよ。西日本と比べると。
道産子じゃない私など、スイカを見るのも寒いくらいで・・・。

お酒を呑める人がうらやましいですな。
サッポロファクトリーの「ビヤケラー」では、未ろ過のピルスナーが飲めるんですが。
アルコールが弱くても、美酒だと分かります。
北海道においでの際は、ぜひご賞味ください。
2012/07/16(Mon) 23:02 | URL  | 小谷予志銘 #-[ 編集]
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