アンチ-ロマンチシズムと文学との幸福な共存を謀ります。当面、「炭鉱のカナリア」になる決意をしました。第二次安倍政権の発足以来、国民は墨を塗られるだろうと予測していましたが、嫌な予感が現実になりつつあります。日本人の心性や「日本国憲法」の問題などを取り上げながら、自分の明日は自分で決めることの大切さを、訴えていきたいと思います。
およそこの世界に存在するものは、損傷を免れない。
生物ならば、病気、障害、老化、死……。
トールキンのホビットは平均して100年くらいは生きるのだという。
平均的な日本人より20年から30年、本を余計に読めるわけで。
この20年を伸ばすあたり、トールキンの匙加減は心憎い。

けれども、20代で夭折する人もいる。
堀辰雄の婚約者だった矢野綾子は、25歳で亡くなった。『風立ちぬ』の節子のモデルとなった人である。

“諦念”という言葉は、その語義以上の理解を得ることが非常に難しいものの一つだ。

老化という緩慢な損傷でさえ、私には諦めがつかないのに。
それで、何かにすがる。何かにすがって、治ろうとする。
宗教、音楽、文学、隣人、自尊心、ブログ……。
取りあえず縋りつこうと思えば色々あるが、どれが切り札となるか?

堀辰雄は綾子を失ったが、堀自身も49歳で亡くなるまで、結核の為に死に脅かされ続けた。
遠藤周作もまた、73歳まで生きたが、やはり胸を病んで長く闘病した。
遠藤の拠り所は、西洋の一神教だった。
堀辰雄に“汎神論”の匂いを嗅ぎとった若き遠藤は、『堀辰雄覚書』を書ねばならなかった。

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『堀辰雄覚書』(1948年)は、次の3部から成る。
  「認識の浄化(死のかげの谷)」
  「実存の悲劇(都築明の旅)」
  「花あしび論(汎神の世界)」

「認識の浄化」は『風立ちぬ』(1938年)を中心に、「実存の悲劇」は『菜穂子』(1941年)を論じたものだ。
ただ、『堀辰雄覚書』の眼目は最後の「花あしび論」にあると思われる。

私は『風立ちぬ』を読み返してみて、『堀辰雄覚書』の第1部が、『風立ちぬ』論としてはかなり歪んでいると感じた。
『風立ちぬ』を普通に読む限り、「死のかげの谷」(『風立ちぬ』の第5章)に‘汎神的方面の発芽を認める’という遠藤の主張は、こじつけめいて見える。
『花あしび』(1946年)の汎神的世界に異を唱えたい若者は、やや強引に『風立ちぬ』を発端にしつらえた。‘力みかえった弟’のように。
8年後、『堀辰雄覚書』を単行本に収録する際、遠藤は後書きにこう書いている。

八年もたった今日、一本として上梓する機会をえて、その校正に眼を通しながら、ぼくは時には力みかえった弟の姿をみるように微笑し、時にはその青くさい衒学ぶりに思わず顔をあからめた次第である。
(『堀辰雄』〔1955年,12月〕あとがき)

先生、仰るとおりです。

“没後の門人”を自称する私は、師の「花あしび論(汎神の世界)」について、どう記事を書こうかと考えを巡らせつつ、今日はフツーに『風立ちぬ』を読む。

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「死のかげの谷」の最後あたり、枯木林の枝を通して道ばたの枯藪の上に落ちている‘小さな光’。
堀辰雄が書いたこの‘幽かにぽつんと落ちている’光を、‘死の微光’と呼ぶのは……。
無理があるかと……。先生……。

  生は死と溶け合い生の中に死が影を与え、死の中に生が光を与える。

  然し死を失う事によってかえって詩人は生を失うのだ。
                       『堀辰雄覚書』(「認識の浄化」)

そう言えないことはない。メメント・モリ……。

しかし、不肖の弟子は、堀辰雄が書いた‘小さな光’を、メメント・モリ、といったところから敢えて脱けだした、もっと俗っぽいものとして読みたい。
それは、‘真似事’のクリスマス(「死のかげの谷」)を楽しむような人々の、神父の苦悩なんぞどこ吹く風の、世俗の光、生活の光。死者の領域と一線を画した此岸の光、と読むのが素直な読み方ではないか。

また、「死のかげの谷」には、カトリックのモチーフが盛んに出てくる。堀の‘私’は、それらに懐疑的だが、それらは‘私’を徐々に生の領域に引き戻しているようだ。

この辺りの事を示す堀のテキストを示したいところだが。
『風立ちぬ』の読み方についても、もう少し言いたいことがあるが、十分長くなった。

ということで、数日後にUpします。(・∀・)
ごきげんよう!


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[2012/02/07 17:40] | 遠藤周作の文学
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